設備部品や機械フレームなどに多く使われている鋳物。
しかし現場ではよく、
- 「鋳物を溶接したら割れた」
- 「溶接後すぐにクラックが入った」
といったトラブルが起こります。
実は鋳物は一般鋼材と比べて非常に溶接しにくい材料です。
この記事では、
- 鋳物が溶接に向かない理由
- なぜ割れやすいのか
- それでも補修溶接したい場合の現実的な対策
を、保全・製造現場目線で分かりやすく解説します。
鋳物とは?
鋳物とは、溶かした金属を型に流し込んで成形した材料です。
代表的なものは鋳鉄で、工作機械のベッドやポンプケーシング、ギヤケースなどに多用されています。
鋳物の特徴
- 成形自由度が高い
- 振動吸収性が良い
- 圧縮強度は高い
一方で、
- 引張に弱い
- 内部組織が不均一
という弱点もあります。
鋳物が溶接に向かない3つの理由
① 炭素量が多く、溶接部が極端に硬くなる
鋳鉄は炭素含有量が高く、溶接時に急冷されると、
👉 マルテンサイトという非常に硬くて脆い組織
が生成されます。
結果:
- 熱影響部がガラスのように脆くなる
- 少しの応力でクラックが発生
という状態になります。
② 熱膨張・収縮による残留応力が大きい
溶接は局所的に高温になります。
鋳物は材質が均一でないため、
- 温度差による膨張
- 冷却時の収縮
が不均一に起こり、内部に強い引張応力が残ります。
この残留応力が、
冷却中や使用開始後に突然割れる
原因になります。
③ 鋳巣や不純物が多く、溶接欠陥が出やすい
鋳物内部には、
- 鋳巣(小さな空洞)
- 酸化物
- 介在物
が含まれていることが多く、
- ブローホール
- 未融合
- スラグ巻き込み
といった溶接欠陥が発生しやすくなります。
それでも鋳物を溶接したい場合の現場対策
完全にリスクゼロにはできませんが、次の対策で成功率は大きく上がります。
① 事前に十分な予熱を行う(200〜400℃)
目的:
- 急冷を防ぐ
- 硬化組織の発生を抑制
- 温度差を小さくする
ガスバーナーや電気ヒーターで母材全体を温めるのが理想です。
ニッケル系溶接棒を使用する
鋳鉄補修ではNi系溶接棒が定番です。
理由:
- 延性が高い
- 割れを吸収してくれる
- 溶着金属が加工しやすい
普通鋼用溶接棒はほぼ確実に割れます。
短いビードで分割溶接+ピーニング
- 長く連続溶接しない
- 10〜20mm程度ずつ施工
- 各パス後にピーニング(軽く叩く)
これにより引張応力を圧縮応力に変換できます。
溶接後はゆっくり冷却(徐冷)
溶接後すぐ空気中に放置すると高確率で割れます。
おすすめ:
- 砂に埋める
- 保温材で包む
などで数時間〜半日かけて冷却してください。
まとめ|鋳物溶接は「できる」より「割れる前提」で考える
鋳物が溶接に向かない理由は、
- 高炭素による硬化
- 熱応力の集中
- 内部欠陥の多さ
という材料構造そのものにあります。
そのため、
👉 基本方針は「交換」
👉 溶接は「応急処置」
と考えるのが現場的に正解です。
どうしても溶接補修する場合は、
- 十分な予熱
- Ni系溶接棒
- 分割溶接+ピーニング
- 徐冷
この4点を必ず守ることで、失敗リスクを大きく下げられますが
あくまでも応急処置にとどめることが重要です。


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