クレーンに使用されるワイヤーロープは、荷重を直接支える最重要保安部品です。
しかし、使用を続けるうちに必ず劣化が進行します。
本記事では、
- ワイヤーロープの基本構造
- クレーン特有の劣化要因
- 現場ですぐ実践できる延命方法
を、設備保全の視点でわかりやすく解説します。
1. ワイヤーロープの概要
ワイヤーロープは、複数の鋼線(素線)をより合わせた「ストランド」を芯材の周囲に配置した構造になっています。
クレーン用ワイヤーロープの主な役割は以下です。
- 荷重の支持
- 昇降動作の伝達
- 横行・走行時の牽引
クレーンでは、
- ドラムへの巻き取り
- シーブ(滑車)での屈曲
- 繰り返しの昇降動作
が常に発生するため、疲労と摩耗が同時進行します。
そのためワイヤーロープは、
壊れてから交換する部品ではなく、
劣化を予測して管理する消耗品
という認識が重要です。
2. ワイヤーロープが劣化する主な要因
① 磨耗
磨耗は、ワイヤーロープがシーブやドラムと接触し続けることで発生します。
主な原因は以下です。
- シーブ溝との摩擦
- ドラムへの巻き取り時の擦れ
- 異物(粉塵・砂・金属粉)の噛み込み
磨耗が進行すると、
- 素線径が細くなる
- 表面が平坦化する
- 強度が低下する
という状態になり、最終的には断線リスクが急上昇します。
② 繰り返し曲げ(曲げ疲労)
クレーンでは昇降のたびにワイヤーロープが曲げられます。
この「曲げ → 戻り」を何万回も繰り返すことで、内部の素線に金属疲労が蓄積されます。
結果として、
- 表面断線
- 内部断線
- 局部的な剛性低下
が発生します。
特に注意すべきポイントは、
- 小径シーブ使用
- 偏荷重
- 巻き乱れ
これらは曲げ疲労を急激に加速させます。
3. ワイヤーロープを延命させる方法
ここが設備保全で最も重要なポイントです。
✅ 定期給油を行う
ワイヤーロープ内部まで浸透する専用潤滑剤を使用することで、
- 摩擦低減
- 腐食防止
- 曲げ疲労の抑制
が可能になります。
表面だけでなく内部潤滑を意識してください。
✅ シーブ・ドラムの状態管理
以下を定期点検しましょう。
- シーブ溝の摩耗
- 偏摩耗
- バリ発生
接触部が荒れていると、ワイヤーロープ側の劣化速度が倍増します。
✅ 巻き状態の是正
- 乱巻き
- 片寄り巻き
- クロス巻き
これらは局部応力を生み、早期断線の原因になります。
ドラムへの整列巻きは寿命に直結します。
✅ 断線本数の管理
目視点検で、
- 素線の断線数
- 集中断線の有無
を必ず記録してください。
「まだ使える」ではなく、
交換基準に達する前に計画交換
が理想的な保全です。
まとめ
クレーン用ワイヤーロープの劣化は主に、
- 磨耗
- 繰り返し曲げ
によって進行します。
延命のためには、
- 定期給油
- シーブ・ドラム管理
- 巻き状態の改善
- 断線数の記録管理
が極めて重要です。
ワイヤーロープは“突然切れる”のではなく、
必ず前兆があります。
日常点検と予防保全を徹底することで、
- 突発停止の防止
- 重大災害の回避
- 保全コスト削減
につながります。


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